【司法試験・予備試験】商法の勉強法!短答・論文別に解説
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このコラムでは、司法試験・予備試験の商法の勉強法について、短答・論文別に解説します。
これを読めば、特に会社法その他の商法の勉強法が分からない方、得意でない方も、勉強の方針が立てやすくなるはずです。
著者も、商法はどちらかというと苦手な科目で、司法試験本番でもほぼノーマークだった分野から出題があり失敗してしまいました。
これらの経験を踏まえて解説したいと思います。
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司法試験・予備試験における商法&会社法とは
商法の法律は、商人の営業・商行為その他商事について定めた法律です。
「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者(商法4条1項)をいい、「商行為」については、商法501条から503条までに定めがあります。大まかにいって営利を目的とする行為といえるでしょう。
会社法は、会社の設立や組織運営、管理について定めたもので、会社が事業を進める上での基本となる法律です(会社法1条参照)。
会社法と商法の違いは、対象者が会社に限定されるのか、個人商店などを含む商人全般に適用されるのかどうかです。
会社が事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とされ(会社法5条)会社法は、司法試験・予備試験の「商法」の科目の中に含まれます。
司法試験・予備試験の科目としての「商法」は大きく分けて、①商法(商法という名称の法律:商法総則・商行為)、②手形法・小切手法、③会社法の3つです。
司法試験では、特に③会社法を中心に出題されますから、重点的に学習する必要があります。
・司法試験
試験時間 |
配点 |
|
論文式 |
商法2時間 |
100点 |
・予備試験
試験時間 |
配点 |
|
論文式 |
民法・商法・民事訴訟法3時間30分 |
各50点 |
短答式 |
民法・商法・民事訴訟法1時間30分 |
各30点 |
商法・会社法の短答式勉強法
商法・会社法の短答式の勉強法について、初学者の方は、法学部やロースクールでの授業の予習・復習と一緒に、短答式の過去問集を解くことをお勧めします。
基本書や、教授がシラバスにアップしているレジュメの予習をしたら、授業を受ける前に同じテーマの過去問を解いておきましょう。
過去問を解くことで、基本的知識の習得が進みます。
この際、一問一答ではなく、実際に出題された過去問集で判例解説などが充実しているものをお勧めします。
単なる暗記ではなく、理解して、なぜ判例がそのような判断をしているのか、きちんと理解することが重要です。
この勉強を重ねることで、論文式の得点アップにもつながります。
商法の短答式試験で問われること
まず、司法試験の短答式試験においては、憲法・民法・刑法の3科目のみしか出題されないため、商法の短答式試験はありません。
一方で、司法試験予備試験の短答式試験においては、商法を含め法律基本7科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)全てが出題範囲となるため、商法科目の対策が必要です。
商法の短答式試験においては、会社法の知識を中心に、商法や手形法・小切手法についても出題されます。
そこで、以下では、これらの幅広い出題に対応するために必要な商法の短答式試験の勉強方法を説明していきます。
学習のポイント
図などを使って全体像を掴もう!
勉強の中心となる会社法について、全体像を大まかに掴むためには、図解の入ったページ数の多くない基本書を参照するのがおすすめです。
特に会社は組織やガバナンス(統治)について理解することが重要ですし、合併・分割などの組織再編では2つの会社が1つになったり反対に1つの会社が2つになったりしますから、これらの仕組みは図を使うとイメージしやすいと思います。
早くから過去問に取り組もう!
条文数が多く、何を勉強すればよいのか途方に暮れてしまうかもしれません。
そのようなときは、実際に出題された短答式の問題で①商法(商法という名称の法律:商法総則・商行為)、②手形法・小切手法、③会社法のテーマ別に編集された問題集を解いてみましょう。
各分野の基本的知識の習得が進みますし、何が出題されるのかイメージが沸くと思います。
法学部やロースクールの予習と過去問集を併用するとよいと思います。
条文に当たろう!
短答式の問題を解く際にも、条文を手元において、解いた後に条文を素読しましょう。
特に会社法は979条までありますし、個々の条文もかなり長文で複雑なものが多いですから、まず、目次を使って、何がどこに書いてあるのか把握しましょう。
条文さえ知っていれば解ける問題もあります。
条文は全文を読む必要はなく、短答式で問題となっている条文の具体的な文言(要件)はどこかを探してそこを重点的に読むようにしましょう。
また、判例が問題としているのは条文の具体的にどの文言についての解釈なのか、把握するようにしましょう。
「暗記」ではなく「理解」しよう!
短答式の勉強というと、とかく解答(〇か×か)を丸暗記しようとする傾向に陥ってしまうことがあります。
ですが、解答を暗記するのではなく、理解して、なぜ判例がそのような判断をしているのかなど、条文の趣旨に沿って自分の頭で理解することが重要です。
このため、過去問集は、一問一答式ではなく、実際に本番の試験で出題された過去問集で、判例解説などが充実しているものを使いましょう。
完璧を目指さない!
司法試験・予備試験で満点を目指そうとしてはいけません。
完璧を目指そうとすると、正答率の低い細かい部分まで勉強を広げることになり、短期合格からは遠ざかってしまいます。
この意味で、過去問集は、受験生の正答率が掲載されているものを使用して、まずは正答率が70%以上の問題を一定のスパンで繰り返し、多くの受験生が正解できる問題について、迷わないで「絶対〇」「絶対×」などと瞬時に判断できる肢を増やしていくことが重要です。
特に、組織再編の分野については、一度自分で図を書いてみることをおすすめします。
直前期には短答だけの対策を!
司法試験は、論文式試験の答案を書いた後、試験日程の最終日が短答式試験ですが、予備試験では、7月に短答式試験が行われた後、約2週間後の合格発表を経て、9月に論文式試験が行われます。
商法のように、短答式では会社法のほかにも、商法や手形法、小切手法が出題されるため、論文式の勉強範囲より広げておく必要がある科目では、短答式試験直前期には短答だけの勉強をしておくことが必要になるでしょう。やはり、その際も、過去問集を解いて、条文に当たるというのが基本です。
なお、手形・小切手については、2026年度末までに全面電子化される見込みですが、紙の手形・小切手が廃止されるだけで、その法律や制度がなくなるわけではありません。
商法の短答式試験の出題範囲についても、法律があり、取引に利用されている限り出題はされるだろうと考えてよいでしょう。
商法・会社法の論文式勉強法
司法試験、予備試験の論文式では、どのようなことが問われるのでしょうか?
商法・会社法は、大きく分けて①商法(商法総則・商行為)②手形法・小切手法③会社法の3つの分野から出題されます。
しかし、司法試験・予備試験の論文式では会社法を中心に問われるため、商法総則・商行為と手形法・小切手法の勉強に時間をかけないことが重要です。
実際に、商法総則・商行為は、予備試験で1度問われただけであり、手形法については予備試験で2回問われただけで、司法試験ではいずれも出題されていません。
それでは、論文式試験の勉強法のポイントを見ていきましょう。
会社法の全体像、制度趣旨を把握しよう!
条文の制度趣旨から深く理解し、全体像を掴む意識をすることは重要です。
制度趣旨というのは、その法律が作られた理由のことです。
これを理解することで、商法・会社法の仕組みがイメージしやすくなります。
仕組みを理解していれば、複雑な条文も意味がわかりやすくなってきます。
問題文の事例が何条の問題なのか分かるようにしよう!
会社法の全体像をざっくりと理解したら、問題文から、設問が会社法の何条のどの要件に関わる問題なのか把握し、答案として作成することが必要です。
例えば、令和3年度民事系第2問(商法)設問1(取締役会設置会社において、代表取締役が会社を代表して当該代表取締役が個人として負う債務を連帯して保証する旨の合意をした場合に、会社がその連帯保証債務の履行を拒絶するために考えられる法的な主張を検討する問題)の採点実感には、「不良に該当する答案の例」として、「本件連帯保証契約が間接取引に該当すること及び多額の借財又は重要な業務執行に該当することのいずれか一方のみ検討する」答案がこれにあたる、とされています。
つまり、答案に問題提起として、①本件連帯保証契約が利益相反取引である間接取引(356条1項3号)に該当し、取締役会設置会社である甲社においてはその取締役会の承認が必要であった(365条第1項)のに取締役会の承認を得ていないこと、②本件連帯保証契約は、多額の借財(362条4項2号)又は重要な業務執行(同項柱書)に該当し、取締役会によって決定されなければならなかったのに、取締役会によって決定されていないので無効ではないか、という2点について問題提起がない答案は「不良」な答案とされているのです。
このように、まずは、問題文に示された事実によって、会社法の何条の問題が生じるのか、理解できるようにすることが大切です。
重要判例の考え方を正確に理解しよう!
問題文を読んで何条の問題なのかすぐに分かるようになるのは、簡単なことではありません。
繰り返しの勉強と一定の学習期間が必要です。
これができるようになるために、判例百選に掲載されている判例の判旨を正しくインプットすることが大切になります。
司法試験、予備試験の論文式の問題は、概ね百選判例から出題されます。
判例を学習する際、判旨を暗記しようとするのはNGです。
最終的に暗記する必要はありますが、まず、何条のどの文言(要件)についての問題なのか、なぜ判例がそのような判断をしているのか、その条文の制度趣旨から論じていくことが重要になります。
この条文についての深い理解が点数を取れる答案力につながります。
単に「条文にそう書いてある」というのではなく、「なぜその条文がそのように規定しているのか」という深い制度趣旨を理解して、アウトプットできるレベルになることを目指しましょう。
法的三段論法を体得しよう!
司法試験は答案も判決文などの法律文書と同様に「①問題提起→②規範→③あてはめ(具体的事実を規範に当てはめる)→④結論」という「法的三段論法」に従って作成する必要があります。
司法試験は、法的三段論法に基づいて文章が書けるかどうかを試す試験であると言えます。
具体的には、問題文を読んで何条の問題かが分かるようにすることが「①問題提起」にあたります。
また、重要判例の考え方を正確に理解することが「②規範」に関する部分です。
次に、「③あてはめ」の段階では、答案に示した規範に対して問題文の具体的事実をあてはめ、最終的に「④結論」を導くことが求められます。
問題文の事実は全て答案に使おう!
③のあてはめを充実させるためには、以下の点に注意すると良いでしょう。
まず、問題文を作成する側の立場に立って考えることが重要です。問題文に記載されている具体的事実は、②規範と関連付けられており、その事実がどのように規範に当てはめられるかを意図して書かれています。そのため、事実の使い方や判例との関連性を深く理解し、それに基づいて論理的に事実を分析することが求められます。
例えば、判例の事案を基にしつつ、事実を少し変えて問題が出されることがあります。これは、受験者が判例の深い理解を持ち、その変化に基づいてどのように判断を修正するかを試すためです。このような場合、判例の基本的な考え方を押さえつつ、事実の違いがどのように影響するかを検討することが重要です。
問題文には、答案作成に役立つすべてのヒントが含まれていると考えましょう。
無駄な事実は一切書かれておらず、すべての記載が重要です。この視点から、問題文を読み解き、記載されている事実を最大限に活用して、答案を作成することが求められます。
これは、全ての科目に共通する重要なポイントです。
過去問に取り組もう!
以上のポイントを踏まえて合格答案を作成するには、実際の論文式の過去問を使って答案を作成することが重要です。
おすすめの方法は、試験本番と同じ条件で、時間内に書けるかどうかチャレンジすることです。最初はうまく書けなくても問題ありません。
作成のステップとしては、①問題文を読む、②答案構成をする、③答案を書くとなりますが、①②に試験時間の半分以上を割いてしまうと、最後まで答案が書き切れなくなってしまいます。そのため、最後まで解き切るスピード感は重要と言えるでしょう。
また、過去問を解いた後は、「出題趣旨」と「採点実感」を読み、司法試験委員会の意図をしっかり理解しましょう。
これにより、問題文に多くのヒントがちりばめられていることを実感できるでしょう。
そうすることで、問題文を読むコツが分かり、論点を外さない答案構成や充実したあてはめができるようになります。
商法・会社法を勉強する上での注意点
次に、商法を勉強する上での注意点、やってはいけないことや、やった方がいいことについて確認していきましょう。
細かい論点を深追いしない
会社法の全体像を掴むためには、まず図解やイラストが豊富な初学者向けのコンパクトな基本書を使うことをお勧めします。
司法試験は裁判官や弁護士などの法曹実務家を選抜する試験であり、少数説を含む学説の詳細な理解に時間をかける必要はありません。
さらに、商法には商法総則・商行為、手形法なども出題範囲に含まれますが、これらすべてを徹底的に学ぼうとすると勉強の範囲が広がりすぎ、合格が遠のく危険性があります。短期間での合格を目指すには、司法試験に必要な範囲に勉強を絞り込むことが重要です。
具体的には、条文と確定判例の基本的な理解に集中し、それ以外の範囲に手を広げないようにしましょう。この戦略を守ることで、効率的に試験対策を進めることができます。
一定の結論に偏った検討をしない
法曹実務家には、バランス感覚が求められています。
これは、多くの人々が納得できるような判断や結論を導くために必要な能力です。
そのため、片方の結論を支持する事実だけを取り上げ、反対意見を無視するような答案は評価されません。
例えば、違法であるという結論を採用する場合、まず適法性を支持する事実を示します。それを評価した上で、その適法性を覆す違法性を基礎づける事実を提示し、評価する必要があります。このようなバランスの取れた論述を心がけましょう。
答練や答案を作成する勉強会に参加する
独りよがりな答案にならないためには、第三者から客観的な意見をもらうことが有効です。自分ではできているつもりでも、他の人から見るとそうではないことはよくあります。
自分の答案が法的三段論法に則って書かれているか、日本語として分かりやすいかを確認することは重要です。
さらに、手書きの答案の場合、字がはっきり読めるかどうかもチェックすべきポイントとなります。
これらを確認するため、予備校の答練を活用したり、勉強サークルやロースクールの友人と答案を持ち寄り、読み比べて意見交換をするのが良いでしょう。
複数人で同じ問題に取り組み、答案を比較することで、自分の答案の改善点が明確になります。
手形小切手法は捨てるべき?
手形法・小切手法は出題範囲に含まれてはいますが、出題頻度が低いため、優先度は低いといえます。
出題者の立場から考えると、ほとんどの人が不合格となる予備試験では設問1つ分程度は出題しても問題はないものの、3割以上の人を合格させる司法試験で手形・小切手から出題してしまうと、書けない受験生が多すぎて差がつかないという問題が生じかねません。
しかし、得点にある程度差をつけるのに必要な範囲で、配点の低い小問として問われる可能性がないわけではありません。
勉強時間に余裕があれば、逆に勉強しておくと大きなアドバンテージになるため、できれば勉強しておいた方がよいでしょう。
司法試験で出題された場合は、書けないことに意識が行き過ぎて書けるはずの設問が書けなくなってしまうことが一番怖いです。
多くの受験生が書けない設問は、書けなくても合否に影響はない、と考えて書ける設問に注力するのが肝要です。
まとめ
商法は、①商法(商法という名称の法律:商法総則・商行為)、②手形法・小切手法、③会社法の3つから出題されます。
まずは、論文式の出題の大部分を占める会社法について、図解や条文の目次などを使って全体像を把握するとともに、百選判例などの重要論点を押さえましょう。
商法、手形小切手法は最初から捨てるのではなく、予備試験の短答式で出題されているような基本的な論点は押さえておきましょう。
論文式では、まず問題文を読んでそれが何条のどの文言(要件)についての問題なのか分かるようにしましょう。
これには基本的知識の蓄積が必要になります。
論文は、実際に書いてみないと書けるようになりません。
時間配分を念頭に最後まで書き切ること、法的三段論法に従って論ずること、司法試験の「出題趣旨」「採点実感」を活用して問題文に書かれたヒントを読み取れるようにすること、あてはめでは問題文の事実を使い切ることがポイントです。
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